研究概要 |
齲蝕と歯肉炎は食生活や健康行動等が関与する生活習慣病であり、罹患率の高い生活習慣病でもある。そこで、我々はこれらの歯科疾患を教材とした「健康知識と健康行動の実践力が身につく生活習慣病予防ための教育プログラム開発」の可能性を考えた。今年度は、健康行動実践力の習得に効果的なヘルスプロモーション教育の開発を言的とし、ティーチング重視の従来型健康教育と,コーチングを重視したPBL(Problem Based Learning)健康教育の効果の違いを検討した。 沖縄県某市在住の小学4・5年生308名(男子155名、女子153名)を対象とした。健康教育前後に健康知識・行動、歯科知識・健康行動および自己管理スキルなどについてアンケート調査を行い、各項目を点数化した。無作為に従来型健康教育を受ける群とPBL型健康教育を受ける群に対象を分け、各々の教育前後での健康知識・行動、歯科知識・健康行動および自己管理スキルの変化を分析した。なお、統計解析には対応のあるt検定を用いた。 結果として、従来型健康教育は「健康の概念」、「予防の概念」、「予防の重要性」を含めた知識習得に対しての効果が高いか、生活習慣病予防行動には結びつかないことがわかった。しかし、PBL型健康教育は「知識習得効果向上」を介せず「予防行動」の改善(p<0.01),あるいはQOL改善には必須の「自己管理スキル」の向上が見られた(p<0.01)。また、自己管理スキルが高い者ほど、学業態度が良いとされ、自己管理スキルの向上は健康面のみならず学習面での効果が期待できる。さらに, 小児期の「自己管理スキルの向上」は、将来の口腔保健の向上や「歯科定期受診の励行」なども期待される。
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