齲蝕と歯肉炎は食生活や健康行動等が関与する生活習慣病であり、罹患率の高い生活習慣病でもある。そこで、我々はこれらの歯科疾患を教材とした「健康知識と健康行動の実践力が身につく生活習慣病予防ための教育プログラム開発」を目的として、健康教育を行ってきた。今年度はティーチング重視の従来型健康教育と、コーチングを重視したPBL (Problem Based Learning)健康教育の2年間の効果を比較検討した。 沖縄県某市在住の小学5・6年生227名(平成19年~21年の3年間本研究に参加した者)を対象とした。2年間の健康教育前後に歯科予防行動、自己管理スキルなどについてアンケート調査、歯科健診(df、 DMF、 OHI-S、 PMA)を行った。無作為に従来型健康教育を受ける群とPBL型健康教育を受ける群に対象を分け、各々の教育前後での歯科予防行動、自己管理スキルおよび口腔状況の変化を分析した。なお、統計解析にはWilcoxonの符号付き順位検定とMc Nemar検定を用いた。 結果は、いずれの健康教育群でもdD歯数、OHI-S、PMAの改善がみられた(p<0.01)が、自己管理スキルについてはPBL型健康教育群のみスコアの向上がみられた(p<0.01)。また、今回分析した歯科予防行動のうち「1日食後3回以上歯みがき」、「デンタルフロスの使用」、「学校健診以外の歯科健診受診」については、両健康教育群とも教育前後で行動変容はみられなかったが、「仕上げ磨き」は、PBL型健康教育群のみ教育後実施の割合が低下した(p<0.01)。 以上の結果からPBL型健康教育は口腔状況の改善のみならず、自己管理スキルの向上を明かとなった。したがって、本研究で開発した教育プログラムは小児期のヘルスプロモーションに有効であると考えられる。
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