研究概要 |
現在の歯科臨床ではう蝕予防処置の効果を判定するには, 予防処置実施数年後に対象部位がう蝕になっていたか否かで判定している. しかし, モニタリングシステムを構築することによって, 効果の判定時間を短縮できるとともに, 初期う蝕の活動性を判定することが可能であれば, より積極的で効果的なう蝕予防が実践できると考えている. そこで, 本研究の目的は早期う蝕検出・定量機器を用いた乳歯初期う蝕のモニタリングシステムを構築することである. 健全な脱落乳歯を実験材料として, 脱灰処理6時間, 再石灰化処理18時間のpHサイクリング法によって乳歯初期う蝕試料を作製した. なお, 脱灰, 再石灰化処理の間にフッ化物処理を行い, 回復性の初期う蝕試料を, また, コントロール群としてフッ化物処理を行わない進行性初期う蝕試料を作製した. 試料表面の観察にはQuantitative Light-induced Fluorescence(QLF)法によって試料表面をWetとDryの2つの乾燥条件でQLF画像撮影を行った. QLF画像は画像解析ソフトによって初期う蝕の定量を行った. 画像解析の結果, Dry試料の解析結果はWet試料の結果よりも有意に大きくなることが分かった. また, 変化の程度を比較した場合, 回復性の初期う蝕は進行性の初期う蝕よりも変化量が有意に小さくなることが分かった. 以上の事から乳歯初期う蝕のモニタリングを行う場合, 初期う蝕の乾燥状態をコントロールする必要があること, また, WetおよびDryの両条件でQLF観察を行うことによって, 初期う蝕を進行性と回復性に分類できることが明らかとなった.
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