研究概要 |
舌を利用した生活習慣指導の効果を確認するために、研究初年度は、舌症状に基づく生活習慣改善指導マニュアルを作成することを目的とした。企業労働者296名(男287、女9)、平均年齢36.4±9.0を対象とし、歯科健診時に身体状況、生活習慣に関する質問紙調査を実施し、舌の規格デジタル画像を撮影した。質問紙調査および舌のデジタル画像により、対象者の身体状況・生活習慣・舌画像データベースおよび舌指導チャートを作成した。さらに、今後の生活習慣指導に利用するために、舌の兆候と生活習慣および身体状況との関連性を検討した。舌の画像から、舌体の色、舌苔の色、舌苔の厚さ、舌苔の範囲の4項目について、それぞれ判定0-2の3段階で評価した。質問紙調査の内容は、性別、年齢、生活習慣、自覚症状などの身体状況、舌に関する意識、行動であり、それらの回答肢選択項目を健康群、不健康群の2群に分類した。判定した舌の兆候と質問項目との関連性について、ロジスティック回帰分析を行った。統計処理には統計ソフト(SPSS Version 11.0 for Windows, SPSS社、東京)を使用し、有意水準を5%以下とした。その結果、舌体の色と有意に関連性が認められたのは、喫煙習慣、肥満傾向、舌に関する意識であった。同様に、舌苔の色と関連性が認められたのは、高血圧、喫煙習慣、舌ブラシ使用であり、舌苔の厚さと関連性が認められたのは、歯肉出血、高血圧、野菜不足、喫煙習慣であり、舌苔の範囲と関連性が認められたのは、多食、野菜不足、アルコール過多、喫煙習慣、舌ブラシ使用であった。生活習慣の内、喫煙が全ての舌の徴候に強い関連性が認められた。今後、指導用チャート、分析結果を利用して、生活習慣指導を実施する予定である。
|