本年度の目的はプリセプターを経験した看護師の経験の様相を明らかにし、プリセプターへの教育的支援へ示唆を得ることである。昨年度データ収集した14名のうち、プリセプターとして1年間の経験を有した12名を対象に分析を行った。分析の結果、プリセプティ及び周囲との関係の相互作用によって生じた経験(11カテゴリ)、プリセプター自身の変化にかかわる経験(5カテゴリ)が見出された。プリセプターは、プリセプティとの関係を基盤に、関わりを模索する中で〔予測と現実とのかみあわなさへ直面〕し、〔自分の看護師としての力量を問われる〕という経験を契機に、〔自分自身への問い直し〕や〔サポートを使い分け(る)〕、〔自らの体験の活用〕をしながら〔自分の指導の拙さと限界の自覚〕をし、自分の現状を見つめつつ状況の打開を試みることでプリセプター自身の変化がもたらされていた。また、プリセプターを担う経験は、自己の〔看護観を自覚し、看護師としての力量の向上〕に寄与し、〔指導者としての立場の自覚と指導者としての構えの変化〕〔自分以外への周囲への関心の広がり〕などの変化をもたらす経験でもあることが明らかとなった。プリセプターが自己の経験を意味付けこの役割を担えるように教育的な支援を実施するためには、自己の経験を学習化する能力の育成を目指したプリセプターへの事前研修の実施、自己の経験を言語化し自分の経験を可視化できる機会の設定、プリセプティからのフィードバックを得る機会の設定、プリセプターを支援できる周囲の人的環境の整備とプリセプターがプリセプティと共に成長していけるための組織風土の醸成が重要であることが示唆された。本研究の結果をもとに、詳細な教育支援プログラムの作成・評価を行うとともに、プリセプターを支援する人材を育成するためのプログラムの作成が今後の課題である。
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