1年目進捗状況 平成19年度実施計画に基づき、国内外の関連文献検討及び予備調査を実施した。以下にその概要と今後の課題について報告する。 1.保健看護の分野におけるスピリチュアリティ(以下Spi)の概念及び定義付けは多岐に渡り、QOLとの相違点はやや不明確であることがわかった。 文献からは、Spiを宗教上の信念や価値と同一視する考え、Spiを生きる意味や目的及び他者とのつながりと捉えるもの、Spiを超宗教的信念や価値とするものに大別された。QOLとの違いに言及するものは稀であり、今後本研究を進める上で、Spiの定義付けとQOLとの位置関係について明確にする必要がある。 2.予備調査の対象となった(a)カトリック教を基盤とする1ホスピス(米国ハワイ州)と(b)仏教を基盤とする1ホスピス(日本)における実践の類似点と相違点について。 設備・環境的類似点として、(a)(b)いずれにも宗教的偶像を祭る若しくは祈りを捧げる空間(礼拝堂・仏堂)が設けられ、宗教的日課及び年中行事が取り行われている。しかし、(b)施設において、より多くの仏教的年中行事や仏事があり、僧侶常駐システムとの関連があると予測される。両施設共に医学的治療は施さず、医療的行為の中心は疼痛及び苦痛の緩和である。(a)は施設でのケアに限定されている(b)とは異なり、在宅ケア・訪問看護が中心である。両施設共に遺族会や家族会という家族同士の繋がりを重要視する活動を展開している。以上のことを踏まえ、今後の調査では終末期ケアにおける看護システムの相違点、ケアが提供される場所、宗教的活動及び僧侶等の関わり、家族の介入の程度等が対象のスピリチュアリティ及びQLに与える影響について考慮する必要がある。
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