本研究は日本人とハワイ人の生活文化を含む文化的コンテクストにおけるホスピス等の終末期患者のQOL及びスピリチュアリティ(SP)についての比較文化的かつ質的探求を試みた。期間中日系ハワイ人の該当者はなく、対象は日本人4例とハワイ人3例の合計7例であった。小規模ながら今回の面接調査及びWHOQOL26スケールを併用した調査から、次のような成果を得た。 1. 対象のハワイ人共通のカテゴリーは、「自分の人生を肯定的に捉えて現状を受容する」、「家族や友人に感謝する」、「心配や恐れを取り除く神の導きを信じる」等であり、終末期の受容やQOLに与える宗教的世界観の影響が否定できないこと。 2. 対象の日本人共通のカテゴリーは「家族や周囲の者に対し申し訳なく思う」、「自分のことが自分でできないことが悔しいと感じる」、「残して行く家族の将来を案じる」、「家族や友人に感謝する」等、終末期の受容やQOLと家族や友人など周囲の人間関係やその喪失感との関連が否定できず、宗教的世界観との関連性はみられなかった。 3. 双方に共通するカテゴリーは「家族や友人に感謝する」、「仕方がないと諦める」であった。 4. WHOQOL26の応用を試みたが、対象数が少ないことや項目数及び内容から終末期のQOL測定に最適なツールであるか否かについては言及できない。今後は海外で開発された終末期QOL尺度の活用も試みる。 今回の前駆的研究は日本人のSP概念構築には至っていない。しかし、これまで欧米文化中心に議論されてきたSP概念の中で、今後終末期における日本人のQOL及びSP概念を構築する上で有用な情報を得ることができた。今後も更なる現地調査を展開し、訪問看護やホスピス及び経済的負担の違い等のシステム分析に加え、死の受容と恐れに対する宗教の役割の相違、家族と地域住民のネットワークが1個人を支える人間関係ネットワークの違い等を包括的に分析する必要がある。
|