研究概要 |
本研究では、患者の生体運動機能の維持や回復を基盤とした褥瘡予防援助への方策を考えることを目的とした。 本研究の基礎的研究において、仙骨部の軟部組織萎縮の有無による動脈分布の特徴と比較に関しての研究をExperimental Biology 2007と日本褥瘡学会誌において発表した。 まず基礎実験は、臥位における体動時の仙骨部体圧とその皮膚血流量の変化を調べるため、健常成人を対象に以下の方法で行った。被験者には、ベッドのマットレス上に仰臥位および30度側臥位になり、頭部(頸部)、上肢、下肢(股関節)、膝関節、足関節の自動、他動運動を行ってもらった。各条件の運動時における体動の動画を記録し、仙骨部の皮膚血流、体圧も測定した。仙骨部の皮膚血流量の測定にはレーザードップラー血流計を、仙骨部の体圧測定には体圧分布測定システムBIGMAT(ニッタ(株))を用いた。記録した動画、測定した体圧、血流値を同時に解析するために、これらの計測機器は、デジタル動画・波形、実時間同期収録装置(The Teraview,ギガテックス社)との同期を試みた。 結果、これらの計測機器とThe Teraviewとの同期が可能となり、同時収録されたデータを分析することができた。収録データの分析により、仙骨部皮膚血流量には、他動運動より自動運動が血流量の増加に影響を及ぼしていたが、体動の中でも足関節の運動に関しては、他動運動の方が仙骨部皮膚血流量の増加に寄与する可能性が示唆された。これらは、仙骨部皮膚血流量を増加させ、自力での運動が困難な対象者への褥瘡予防援助を行う上で有用と考えられる。今後は、関節の他動運動の角度と仙骨部の皮膚血流量との関係を検討し、再度実験を重ねる必要がある。さらに、運動の効果とその運動が血圧などの循環動態に与える影響の有無を確認する予定である。
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