本研究では、患者の生体運動機能の維持や回復を基盤とした褥瘡予防のための方策を考えることを目的としている。今年度は、平成19年度の実験の条件をさらに検討し、仙骨部領域の筋や皮下組織等の軟組織および仙骨部の皮膚血流を増加させる自動運動および他動運動の影響と効果を確認することを目的とした。 褥瘡の発生現況を把握するために、本学の篤志献体にみられる褥瘡の保有状況を調査した。褥瘡は、依然として仙骨部に最も多く、褥瘡対策診療報酬改訂後も褥瘡保有率の減少、保有部位等の状況変化の傾向はあるものの全体的には有意差を認めるほど褥瘡は減少しておらず学会で報告している。 また、四肢の関節運動が仙骨部皮膚血流量に与える影響を検討する実験を行った。被験者は健常者7名。側臥位にて肩関節(屈・伸)、足関節(底・背屈)の自他動運動の条件を変え実施した。その結果、仙骨部皮膚血流量は安静時を100%とすると自動運動の場合、肩関節においては、運動時104±2.6(101〜109)%、運動後103±3.8(100〜111)%と増加し持続する傾向を示した。足関節運動では、肩関節の場合には劣るものの運動時105±3.9(101〜112)%、運動後104±2.9(100〜108)%と同様の傾向を示した。他動運動においても、肩関節では運動時103±4.8(97〜109)%、運動後、102±1.9(100〜108)%、足関節では、運動時100±1.7(98〜103)%、運動後103±3.1(99〜108)%と血流量が増加・維持する傾向を示した。 これらの結果から、肩関節あるいは、足関節の自他動運動は、身体機能の維持のみならず、褥瘡の好発部位である仙骨部皮膚血流量の増加に貢献する可能性が示唆された。これらの運動が仙骨部褥瘡予防の対策としての運動が意義のあるものと考えられる。
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