本研究は、患者の生体運動機能の維持や回復を基盤とした仙骨部褥瘡予防援助を考えることを目標とした。特に寝たきり患者など自動運動が困難な患者の廃用症候群の予防援助を考えるため、仙骨部領域の筋や皮下組織等の軟組織血流を反映する仙骨部皮膚血流量に足関節の自動運動および他動運動が与える影響を確認することを目的とした。今年度は、平成20年度の実験の条件を検討し一部改良して行った。 四肢の関節運動が仙骨部皮膚血流量に与える影響を検討する実験を行った。側臥位にて肩関節(屈・伸)、足関節(底・背屈)の自他動運動をそれぞれ実施した。その結果、仙骨部皮膚血流量は自動運動の場合、肩関節および足関節運動においても、運動時増加し傾向を示した。他動運動においても、肩関節および足関節において、自動運動には劣るが血流量が増加・維持する傾向を先行報告している。今年度はその運動の速度に条件を持たせ『可能な限り早く』および『一定の速度』とし、それぞれ肩関節、足関節の運動を行った。被験者は健常者7名。この結果、『可能な限り早く』の条件下での仙骨部皮膚血流量は、肩関節の自動運動時に最も増加がみられた。前年度の傾向と同様に肩関節運動は足関節運動よりも仙骨部皮膚血流量の増加がみられなかった。『一定の速度』の条件下においては、足関節自動運動で最も仙骨部皮膚血流量が増加した。興味深いことに足関節他動運動においては、仙骨部皮膚血流量が運動時には増加せず運動後に増加がみられ、肩関節自動運動と同程度血流量が増加し血流量が持続する傾向を示した. これらの結果から、肩足関節、とくに足関節の他動運動が、臥床患者の仙骨部皮膚血流量を増加あるいは維持するために寄与することが示唆されたと考える。
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