研究概要 |
X総合病院のリーダー研修に参加した中堅看護師18名を対象に,エモーショナル・インテリジェンス能力(以下,EI)め現状分析を実施するとともに,アクションリサーチ法にてEIの育成に効果的な教育プログラムの検証を行った。現状分析のために用いたテストバッテリーは,EIの把握に有効とされる質問紙調査EQSである。年間4回計画されている集合研修の教育内容は,計画,実施,および事実の発見,評価までを循環させながら進めていくアクションリサーチ法により検討を行いながら決定することとした。 毎回の研修の評価は,参加者より提出された振り返りシートで行った。研修1回目の振り返リシートには,「自分の意見を主張するようにする」といった前向きな課題が記載されているものの,具体性には乏しいものが多かった。そこで2回目には具体的に表現する・考えるワークを取り入れ,そこでの自分の傾向を振り返るよう促した。その後のシートには「スタッフの長所,短所をメモにして把握する」といった具体的な動きとともにメンバーシップへの意識づけが図られた。この意識づけを強化するため,3回目では的確な状况把握,そして自身の感情と相手の感情を理解し,メンバー同士の相互理解を深める(EIの強化)ことをねらいとしたワークを実施した。シートには,「疑問や感じたことなど,できるだけ相手へ投げ返す。」といった記載がみられた。このことを実際にやってみるというワークを4回目に取り入れた結果,「疑問を返されても全然不快ではない」「理解してくれようとしているのが伝わる」といった体験による気づきと自信が生まれた。 こうした介入によるプログラムの全体評価としてEQSの前後比較を行ったところ,研修後の平均値は全て上昇していた。これは,EIの向上を裏付ける結果であり,プログラムの有効性を示唆するものと考える。
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