研究概要 |
呼吸介助やシルベスター法は,呼吸理学療法で用いられる手技であり,どちらの手技も,主に慢性閉塞性肺疾患等の疾患をもった人々に行われている。そして,これらの手技は,先行研究により換気を促すことが明らかとなっている。換気を促すことにより,リラクセーション効果が期待でき,対象者自身が呼吸に意識を向けることにつながるのではないかと考えた。そこで,呼吸介助およびシルベスター法を高齢者に適応し,生理的測定指標,心理的測定指標からその効果を明らかすることを目的に本研究を行った。 対象は,65歳から75歳までの前期高齢女性20名である。測定は,平常呼吸,自発的深呼吸,呼吸介助,シルベスター法の4つの条件設定を行い,測定指標(換気指標,血圧,脈拍)の変化をみた。また,主観的な指標として,呼吸介助とシルベスター法に対する評価質問紙,POMS (Profile of Moodstates : POMS)短縮版を測定した。倫理的配慮として,研究対象者に口頭及び文書で研究の目的や概要等を十分説明し,研究の趣旨が理解された後,文書により同意を得た。まだ,測定中に身体状態に負担がないか,測定前後で体調の変化がないかを十分観察した。その結果,リラクセーション効果を測定する指標として,POMS短縮版を用いたが,高齢者ではその指標による変化はとらえにくく,明かな変化を認めなかった。現在,リラクゼーション効果を測定する指標として,高齢者の負担になりにくく,その効果を鋭敏にとらえられる別の測定指標を検討中である。
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