呼吸介助およびシルベスター法は、呼吸を効果的に行うための方法であり、先行研究により換気を促すことが明らかとなっている。また、20歳代女性にこれらの手技を行った先行研究では、リラクセーション効果が示唆される報告もなされている。本研究は、呼吸介助およびシルベスター法の実施が高齢者に対してリラクセーション効果をもたらすのかについて、生理的測定指標と心理的測定指標から検証するものである。 今年度は、昨年度から継続して測定が可能であった65歳から77歳までの高齢女性14名を対象に、呼吸介助とシルベスター法を組み入れた呼吸法として、(1)呼吸介助を用いた胸式深呼吸、(2)シルベスター法を用いた上肢の運動を取り入れた深呼吸、(3)腹式深呼吸を行い、安静のみの対照群と比較することで、リラクセーション効果を検討した。その結果、生理的測定指標では、対照群と比較して呼吸伝実施時に血圧値で変化がみられた。心拍変動解析では、個人により傾向は異なり、一定した傾向はみられなかった。また、対象者の意見では、呼吸法を実施することで、気持ちの良さを表現されることが多かったが、心理的測定指標として用いたSTAIでは、明らかな変化がとらえられなかった。 本研究を通じて、呼吸に注意を向ける簡単な深呼吸法を組み合わせることにより、対象者の主観的な意見では、気持ちの良さが表現されたが、測定指標からその効果を明確にするには至らなかった。しかし、2年間にわたり呼吸に関する研究に参加することで、ふだん注意を向けない呼吸に意識を向けることの重要性について、認識が高まったと考えられる。今後も引き続き検討を重ねていくことが必要であると考える。
|