研究概要 |
高齢化社会や高度医療が進んだ現代,人々の価値観の変移や様々な医療政策によって,がんの終末期に在宅療養を選択するケースは確実に増えていくと考えられ,患者や家族がニーズに沿った幅広い医療を選択できるように支援体制を整えていく必要がある。本研究は,がん終末期の在宅療養における支援体制の課題を明らかにしていくことを目的とする。対象を部位別がん死亡率の高い肺がんの終末期患者とし,支援を受ける患者側の面接調査を通じて問題を検討していく。今年度は文献検討とともに予備調査として訪問看護師への面接調査を行った。その結果肺がん患者が終末期に在宅療養を選択するケースは実際には少ないことがわかってきた。がん終末期患者の療養場所の決定に関連した要因については先行研究により明らかにされつつあり,特に肺がんにおいては疾患の特徴がそれらの要因に大きな影響を与えていることが推測された。また予備調査において,がん終末期の在宅療養では呼吸困難や疼痛などの症状コントロールの困難さはあるものの,患者が生き甲斐や望むことについて看護師に語る機会は入院中よりも多いことが示唆された。次年度は実際に在宅療養を選択した患者に対しての面接を予定しており,療養場所の決定要因に加えて,在宅を選択した後の患者の認識やQOLを捉えるために,QOL尺度などを応用し調査内容に組み込めるように検討中である。その他在宅療養を選択している肺がん終末期患者が少ないため,協力機関および対象患者をどのように確保していくかは今後の課題である。
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