温罨法は、血流と細胞活性に変化を与えるという効果から保温だけではなくさまざまな目的で実施されている。現在では、脳血管疾患や生活習慣病に罹患している人も多いため、後頚部温罨法を安全に実施するためにも血圧や脳血流、体温の変化を含む生体反応について明らかにすることは重要である。 本研究の目的は、後頚部温罨法が及ぼす作用の基礎的研究として、成人女性を対象に後頚部温罨法による生体反応(脳血流、血圧、脈拍、深部体温、四肢末梢表面温度)について明らかにすることである。 研究方法 : 対象は、健康問題がない成人女性34名(26.7±9.93歳)を被験者として安静時、実施中5分・10分、除去後5分・10分・15分・20分の計7回の測定を実施した。測定項目は、血圧、脈拍、深部体温、四肢末梢表面温度(手掌・足底)、脳血流の変化である。分析方法は、SPSS16.0 family for willdowsを用いて繰り返しのある一元配置分散分析法を行い、事後検定として安静時をコントロールとして多重比較を実施した。 結果および考察 : 深部体温と手掌・足底表面温度は、安静時と比較してすべての測定時間において有意に温度の上昇を認めた。脈拍は、除去後5分値・10分値に有意な低下が認められた。収縮期血圧は、除去後5分値・10分値において有意に低下が認められたが、拡張期血圧は有意差がみられなかった。R-O_2Hb(酸化ヘモグロビン濃度)は、除去後5分値・10分値に有意な低下が認められ、L-O_2Hbは、実施中10分値、除去後5分値・10分値・15分値で有意な低下がみられた。 本研究の結果から後頚部温罨法は、深部体温、四肢末梢表面温度を有意に上昇させるが、血圧や脳血流などの循環系への影響は少ないことが明らかになった。さらに睡眠導入やリラクセーション効果など後頚部温罨法の介在効果を目的とした看護援助に活用することができると示唆された。
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