マッサージは循環不全や倦怠感、疼痛などを訴える対象者に対し、看護の臨床現場でも一般的に行われるケアである。これまでに臨床現場で多くの有効事例が蓄積されてきたが、マッサージ効果の理論的根拠を確立するには至っていない。対象者に合わせた看護ケアとしてマッサージを実施するためには、マッサージ刺激の様々な影響要因を系統的に検討していくことが必要である。そこで、本研究では、マッサージを看護ケアとして効果的に活用するために、循環系に及ぼす効果に注目し、ケア方法の選択に大きく影響するマッサージ刺激時間、部位、体位による効果の比較検討することを目的とした。 本年度は、マッサージ刺激の時間の長短による循環器系への影響を明らかにするために、循環促進および自律神経系への影響を比較・検討する実験を行った。実験では、体位(仰臥位)およびマッサージ部位(足部)・方法(軽擦法)を統一し、2条件のマッサージ時間(5分と15分)を設定してデータを測定した。体位、マッサージ部位による影響が無いことを確認するために、対照条件も設定した。 その結果、5分および15分のマッサージ条件では、安静時と比較して心拍数と心拍変動のHFの増加が認められた。5分と15分の条件間で有意な差はなく、対照条件では時間経過に伴う有意な変化は認められなかった。また、15分のマッサージ条件では、拡張期血圧の上昇傾向と血流量の増加傾向が認められた。これらのことから、心臓の副交換神経活動は短時間でも亢進されると考えられるが、循環促進効果を得るためには時間をかけたマッサージが必要である可能性が考えられた。 マッサージ時間による影響を明確にするため、来年度以降さらなるデータ蓄積を継続し、マッサージ部位、体位の影響についても検討する実験を実施する予定である。
|