看護の臨床現場で用いられているマッサージには、様々な影響要因が存在する。マッサージの効果について基礎的データの蓄積が進んでいるが、細かな影響要因を含めた理論的根拠を確立するには至っていない。そこで、本研究では、マッサージを看護ケアとして効果的に活用するために、循環系に及ぼす効果に注目し、ケア方法の選択に大きく影響するマッサージ刺激時間、体位による効果の比較検討することを目的とした。 本年度は、マッサージ刺激の体位による影響を明らかにするために、循環促進および自律神経系、主観評価への影響を比較・検討する実験を行った。実験では、マッサージ部位(足部)・方法(軽擦法)・時間(20分間)を統一し、マッサージ時に2条件の体位(仰臥位と座位:以下仰臥M、座位M)を設定して、マッサージ前10分からマッサージ後20分までの計50分間のデータを測定した。また、それぞれマッサージを実施しない対照条件も設定した。 その結果、心拍数は両条件とも、安静時と比較してマッサージ中に心拍数の減少が認められた。仰臥Mではマッサージ中に心拍変動の高周波成分に減少が認められたが、対照条件では時間経過に伴う有意な変化は認められなかった。また、仰臥Mでは、マッサージ中に血圧値の低下傾向が認められた。皮膚温はいずれの条件問にも差は認められなかった。主観評価(VAS)では対照条件と比較して、仰臥M、座位M条件では、足部及び身体全体の快適さが増加していた。座位Mではマッサージ後に気分や心地よさも増加していた。これらのことから、心臓の副交換神経活動は体位により影響を受けるが、皮膚温の上昇をもたらすような循環促進効果は体位による差はないと考えられた。また、主観評価ではマッサージに対する快適さは体位による差がないが、座位Mでの気分や心地よさには同一体位時による腰部への負担が少ないことが影響していると考えられた。
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