研究概要 |
「更年期女性に対する後頚部温罨法の効果」 温罨法は自律神経系を整える効果があることが示唆されている。しかし自律神経の失調が生じやすい更年期の女性に対して温罨法がどのように心身に働きかけるのかは明らかになっていない。本研究では後頚部温罨法を更年期の女性に実施し、同一人物に対して、実施した場合としない場合で自律神経活動の変化を記述することを目的とした。 更年期の女性3名に、同一被験者で計3回、日を変えて(1)「温熱シート」(2)「コントロール」(3)「温熱シート」の順に実施した。 主観的指標は小山(小山1993)による簡略更年期指数と研究者作成の快不快尺度を使用した。生理学的指標は、心拍変動より副交感神経としてHFを、交感神経としてLF/HFを記録し、皮膚電気活動(SCL)と皮膚温も測定した。基準値(20分)、後頚部温罨法(10分)、安静(20分)の計50分間ベッド上仰臥位にて測定した。 事例1(閉経後,54歳)は、安静臥床のみでSCLは緩やかに減少したが、温罨法中は強い眠気があり、LF/HFが低く維持された。事例2(閉経前,48歳)は、温熱刺激に同調する一時的なSCLの上昇と温罨法中のHFの亢進がみられ、眠気とともに手掌皮膚温が上昇した。事例3(55歳,閉経後)は、温罨法は快適だったが、実施後にSCLとLF/HFが上昇し、顔面のほてりによる不快が生じた。事例1と3は、温熱刺激に対する反応とみられる温罨法貼用瞬間のSCLやLF/HFの交感神経系の変化はほとんどみられず、また実験終了時には温罨法をしない場合と同様に末梢部位の皮膚温が低下した。 事例2は、温熱に交感神経が反応するとともに副交感神経の亢進と末梢部位の皮膚温上昇があり、温罨法が身体への快の刺激となったことが示唆された。一方、事例1と事例3は、温罨法に対する自律神経の反応が少なく、温熱が身体への刺激となりにくいことが考えられる。
|