看護師による情報収集に際しての患者の自己情報コントロールの現状と、それに関連する要因を明かにすることを目的とし、4都道府県300床以上の病院に調査の依頼をし、三都道府県の17病院(病床数300〜1000)から承諾を得て、入院中の患者で退院が決定した方に対して質問紙調査を行った。質問紙は病院の看護師から患者に渡してもらい、回答は患者から直接投函してもらい回収した。質問紙は無記名であり、質問紙への回答は自由意思によるものであることなど説明文を添付するなどの倫理低配慮を行った。調査期間は2008年9月〜11月であった。配布した質問紙は920、回答数は275(回収率29.8%)、男性162命、女性108名、平均年齢59.8±14.6歳であった。調査した項目は、一般的に入院時に看護師が患者から収集する20項目について、(1) 今回の入院で、看護師に情報を提供する際の抵抗感の程度(2) 提供した情報について、共有してよいと思う範囲、およびそれらに関連する因子として(3) 年齢・性別・居住地などの患者特性(4) 相互独立性-相互協調性自己観尺度(高田. 2000)について質問した。本尺度は、相互独立的自己観(独断性・個の意識主張)・相互協調的自己観(評価懸念・他者親和順応)のバランスについて測定する尺度である。ほとんどの患者が、全ての情報について情報を提供することに抵抗感が少なかった。提供した情報については病院内の全ての医療従事者が共有して構わないと考えている現状が明らかになった。これらの結果は、年齢・性別・地域などによる差異はなかった。相互独立性-相互協調性自己観尺度の「評価懸念」、すなわち他者への意見や他者の地位・関係性についての配慮や関心が高いと、共有の範囲を広く考える項目が多いことが明らかになった。今後これらの日本人が捉える自己情報コントロール権の現状を踏まえて情報収集していく必要性が示唆された。
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