[概要]本プロジェクトの目的は「妊産婦のストレスを適切に評価できる指標の開発」と「ストレスが高い女性に対するケア指針の考案」である。ストレスが妊娠経過や出産後の心身へ影響を及ぼす、すなわち妊娠・出産に関する安全性と快適さを脅かしていることは多くの研究者によって明らかにされていることであるが、そのメカニズムにおいては不明な点が多く残されている。よって、ストレスが妊産褥婦に及ぼす影響について追跡するとともに、妊産婦のストレスを適切に評価し、ストレスが高い対象をケアすることで、病的な心身状態に至らないようにすることは母性衛生向上のために重要な課題といえる。平成19年度では「妊産婦のストレスを適切に評価できる指標の開発」にむけて、妊娠前半期に質問紙調査と生理学的指標によるストレス評価を行い、妊娠経過との関連を分析した。生理学的指標としては分泌型免疫グロブリンA(以下s-IgA)を採用した。またストレス対処能力の指標としてSense of Coherence(以下SOC)との関連も分析した。 [結果]流早産のリスクをもつ対象者以外で、継続調査可能であった48名のs-IgAを高低2群に分類し、妊娠経過との関連をχ^2検定で分析した結果、切迫流産や切迫早産が有意に多いのはs-IgA高値群に比べ低値群であった(p<0.05)。また、SOC低値群でさらにs-IgAが低値である群に切迫流産や切迫早産が有意に多かった(p<0.01)。 [考察]妊娠前半期の免疫能がその後の妊娠経過に影響している可能性が示された。従来からストレスと流早産の関連が指摘されていることから、妊婦のストレスを評価する指標としてs-IgAの有用性が示唆された。
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