研究概要 |
本プロジェクトの目的は「妊産婦のストレスを適切に評価できる指標の開発」及び「ストレスが高い女性に対するケア指針の考案」である。 本年度は,昨年度までの結果(妊婦のストレスを評価する指標としてSense of Coherence日本語版(SOC)や血清中分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)の有用性が示唆されたこと)をうけ,対象者数を増やし実用性を検討した。妊娠前半期,妊娠後半期に質問紙調査とs-IgAの測定を行い,妊婦の年齢・出産歴・喫煙状況・過去の流早産の既往,妊娠前半期のストレス認知度,SOC, s-IgAと妊娠後半期の妊娠経過(切迫早産)との関連を多変量解析で分析した。110名の妊婦の研究参加があったが,切迫早産との関連を分析をするうえで除外対象があったため,72名の妊婦が分析対象となった。 その結果,切迫早産を予測する因子として,妊娠前半期のSOCやs-IgAが低いことが抽出された。従って,妊娠前半期のSOCやs-IgAがその後の妊娠経過を予測する因子となり得ることが示唆された。また妊婦の健康を維持するために,妊娠前半期に妊婦へのストレスケアを行う重要性も示唆された。しかしながら,s-IgAによる評価は客観的評価が可能であるという利点に反して,臨床における実用性という面では課題が残された。 来年度はSOCによるストレス評価の臨床での実用性を明らかにすることを課題とし,「ストレスが高い女性に対するケア指針の考案」について成果をまとめる予定である。
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