本研究の目的は、不妊治療後妊娠し早産した母親の、母親役割獲得過程における特徴を明らかにすることである。母親に対する半構成的面接法で得られたデータを質的帰納的に分析した結果、不妊治療中から対児愛着を形成する、ボンディングの伴わない養育者としてのアイデンティティを形成する、子どもの状態の変化に母親としてのアイデンティティが左右される、母親としてのアイデンティティを否定し既存のアイデンティティで代用する、子どもが発育した後に母親としてのアイデンティティを形成する、の5つの特徴が明らかとなった。 本研究において、不妊治療後妊娠し早産した母親の母親としてのアイデンティティ形成過程の不安定な側面が明らかとなり、不妊治療中からのボンディング形成や母親としてのアイデンティティ形成への継続的支援の必要性が示唆された。
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