本研究の目的は、(1)一般病棟に入院している患者や家族が抱くスピリチュアルペインの実熊とその影響要因を明らかにすること、(2)患者族が求める看護援助から、スピリチュアルペインに対する具体的な看護援助方法を検討することである。 平成20年度は、調査の同意が得られた患者家庭に対し面接調査を実施した。それと並行して医師や看護師およびカルテや看護記録から、疾患・病状経過・治療状況・インフォームドゴンセント内容等について情報を収集した。調査期間は、平成20年4月から平成21年2月まで実施した。調査対象者は一般病棟に入院治療中の肺がん、胃がん、胆管がん、すい臓がん、食道がん、大腸がんの患者17名(年齢30歳代〜70歳代、平均年齢59.9歳)とその家族5名であった。これらの対象者への面接結果より、患者においては、(1)がん診断を受けるまでの検査期間から治療を受けるまでの期間が長かったことにより、見通しの立たない立ち感をきしんでいたこと治療および病状経過に伴い、現在、行っている治療への疑問とセカンドオピニオンへの期待に葛藤を抱えていること、(3)治療しても治癒しない限界を認識しているが、病状が安定していることで先行きの経過予測ができないことへの不安を抱えていた。しかし、その一方で、苦しみの中にも治療そのものが生きる支えとなっている患者や、余命告知を受けたことで、自分が何をすべきかが見えたとして、限られた時間を計画的に過ごすことに意味を見出す患者もいた。家族においては、患者に対して何もできないという無力感を抱き苦しんでいることが分かった.スピリチュアルペインに影響している要因には、医療者(特に医師)との信頼関係、医療者とのコミュニケーションの在り方、家族等のサポートが関係していた. また、患者家族は、がん診断から治療する経過の中で生じた問題について、医療者へ相談できる機会を求めていることが示唆された。
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