平成19年4月の医療法19条の改正により、有床助産所の開設のための法的な要件が加わった。嘱託医の診療科が産科医であることに限定され、医師個人との契約であった嘱託医に加えて、医療機関との嘱託契約が開設の必須要件となった。このように、助産所の開設の形態は、有床・無床という施設の有無によって法的な要件が異なっている。そして、分娩の取り扱いの有無が業務上の大きな開設の要件の違いがあると考えられる。 本調査は、分娩の取り扱いがあり、医療法第19 条の改正の前後(平成15 年から平成21 年)に助産所を開設・届け出変更を行った助産師23 名に半構成的インタビューによって、助産所開設の要件について聞き取り調査を行った。調査期間は、平成19 年4 月から平成21 年11 月であった。調査は日本赤十字看護大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。 助産師23 名のうち、有床助産所の開設者は12 名で、出張専門の助産師は11 名であった。分娩の取り扱い件数は、年間1 件から80 件であった。出張専門の助産師のうち1 名は、保健指導や母乳マッサージのために施設の届け出をしていた。ほとんど1 名の助産師が1 名の女性の妊娠期から産褥期まで継続的にケア提供し、分娩時のみ安全確保のために助産師1~2名を非常勤で雇っていた。分娩件数の多い助産所では、固定した助産師2~3名が交替で妊婦健康診査を行っているが、分娩時に必ずケアを提供する助産師1 名は、継続的に女性へケア提供していた。 23 名の助産師はすべて連携医療機関との契約を行っていたが、書面の取り交わしに向けて活動中の者も数名いた。連携医療機関との契約の内容は、助産所もしくは女性の自宅等で出産する予定の女性について医療機関で妊婦健康診査を2~3回実施することを条件としている施設と、搬送が必要となった場合のみで、妊婦健康診査はすべて助産所にて実施する施設もあった。 嘱託医は出張専門助産師の一部は、法的な義務付けがないので契約していない助産師も数名が、医療のバックアップのために法的な定義のない「協力医」という名称で産科医からのコンサルテーションを受けていた。協力医については、出産を依頼する女性自身から紹介されることもあった。すべての嘱託医契約は、助産師のかつての勤務先の同僚や近隣の産科医へ個人的に依頼することで成立していた。そのため、助産師の勤務期間が長い場合は、助産師個人の人脈があるため、比較的短期間に契約が成立していた。しかし、出産を取り扱っている産科医そのものが助産所の近隣にいない地域もあった。
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