乳がん患者の罹患率・死亡率は、高齢化および生活習慣の欧米化を背景に急速に増加している。乳がん患者の心理社会的苦痛は診断後1年間の有病率が高いことが報告されているが、適切な介入を受けることができている患者は少数であるとされている。また、今までに開発された介入においては、がん患者がどのようなニーズをもっているかは考慮されてこなかった。がん患者のニーズは患者自身の支援の必要性を反映しており、満たされないニーズを改善すること自体、医療における重要なアウトカムである。そこで、がん患者の心理社会的な苦痛を早期に把握し、介入することを通して患者のQOL向上に資するために、患者のニーズ把握に基づいた個別的かつ包括的なケアを提供することが可能な支援サービスを開発し、実行可能性を評価することを目的とした。 研究デザインは、参加者に対してニードに基づいた看護介入を行い、その前後で効果を比較する1群の臨床試験とした。 対象は、乳がんに対する手術を受けた後、外来で補助療法(化学療法または内分泌療法)を受けている女性とした。適格基準は、(1)組織学的に浸潤性乳がんであることが確認されていること、(2)遠隔転移のないこと、(3)術後3カ月以上、6カ月未満であること、(4)ECOG-PSが0-2であること、(5)年齢が20歳以上であること、(5)精神的ストレスのスクリーニング法であるつらさと支障の寒暖計を実施し、Distress thermometerが3点以上かつImpact thermometerが1点以上であること、である。 適格基準を満たし、研究参加に同意が得られた対象に対し、日本語の信頼性・妥当性が確認されているニーズ調査票であるThe short-form Supportive Care Needs Survey(SCNS-SF34)を用いて、対象のニーズを把握し、回答されたニーズに対し看護師が合計4回介入を行う。看護師は主治医、外来看護師等と協働し患者のニーズが満たされるように支援を行う。 本研究の実行可能性は、介入への参加割合とプログラムの継続割合で評価する。また、効果についても予備的に検討を行い、プライマリーエンドポイントはProfile of Mood States (POMS)のTMDと各下位尺度とし、セカンダリーエンドポイントは、SCNS-SF34、European Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-C30(EORTC QLQC-30)、再発脅威の測定尺度であるThe Concerns About Recurrence Scale (CARS)、医療に対する満足度とした。
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