研究概要 |
本研究は,がん患者・家族の相談活動・自己決定支援の具体的方策,精神的支援をもたらすツールとして,闘病記を用いた患者支援活動の有用性を明らかにすることを目的とした。具体的には,(1)闘病記の選定基準を明らかにする,(2)「闘病記を読む会」を開催し,体験の共有の場を設定する,(3)患者の療養におけるニーズを把握し,他期間へつなぐ機能としての患者図書室の有用性を明らかにする,であった。今年度の実施計画は(1)患者情報室における利用者ニーズを把握する,(2)「闘病記を読む会」の準備として看護師と闘病記の読みあわせを行う,(3)(2)と同時に「闘病記を読む会」の前段階として,研究代表者の所属する大学学部学生との読みあわせを行う,であった。 研究代表者所属の倫理委員会および「闘病記を読む会」実施予定施設の倫理委員会に研究計画書を提出した。前者は承認を得たが,後者については委員会の開催に時間を要し,かつ実施方法の再検討が必要であるとのことから不承認となった。 (3)の学生との読み合わせについては,1年間をかけて準備を行った。学生・教員6〜13名が週1回「闘病記を読む会」を開催し,通算20回を超えた。参加者は,学生といえども臨床経験10年の者もいる3年次編入生であり,読み会う中で述べられる感想は,自己の看護実践の振り返りであり,患者理解を深めるものであった。今後,施設側の看護師と行う上での基盤となっていることが示唆された。 研究協力者の施設は,研究代表者の所属する健康情報棚プロジェクトからの闘病記寄贈を受け,患者情報室の活発な活動を行っていた。しかし施設側の意見としては,昨今の患者への情報提供の難しさから。「闘病記を読む会」開催について困難感および実施後の責任の負い方に懸念があるとのことであった。今後は,研究実施後の患者の相談施設の確保や,患者の主治医との連携など,施設で研究が実施できるような方法の再検討が必要である。
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