今年度当初、研究協力を得られていた病院施設から研究協力辞退の申し出を受けたため、他施設を検討したが得られず、以下のように研究の遂行方法を変更した。(1) 第一の目的は、病院施設看護師と患者介入へ使用する本の選定が検討事項であったため、当大学大学院看護学研究科の有する闘病記文庫において、看護師経験のある編入学生との闘病記抄読と活用可能性の検討、また文庫自体の充実ならびに運用面での整備、広報活動に重点を置いた。文庫運用の利便性を図ったのちには、地域市民による利用増加が見込まれ、研究を遂行する上で病院施設にとどまらず地域市民に対する健康教育の観点からも活用方法の拡大が予測された。一方、(2) 本研究者が病院施設の看護師研修として受けた依頼について闘病記を活用する方法にて試みた結果、参加した看護師たちから好評であった。これは看護介入としての闘病記の活用可能性が示されたことを意味し、次年度も継続的に行う予定である。また、(3) 闘病記は今や書籍にとどまらずWeb上の個人ブログやそれを中継する企業サイトの存在など形態がさまざまに発展しており、闘病記に対する地域市民のニーズを把握することを目的に、平成21年1月10日「闘病記研究会シンポジウム『医療資源としての闘病記を考える』-闘病記とは何か、活用と提供方法を探る-」を開催した。約60名の参加者が得られ、研究者、医療者、患者図書室担当者、インターネット関係者、メディアなど各々の立場から活発な議論が行われ、医療資源としての闘病記の重要性が示唆されるとともに、その提供方法や内容の質の担保など考慮すべき課題の存在が明らかとなった。この開催内容は、以下の新聞記事に掲載された。産経新聞 : 平成21年4月16日朝刊18面、毎日新聞 : 平成21年5月上旬2回連載予定。
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