本研究は、がん患者・家族の相談活動・自己決定支援の具体的方策、精神的支援をもたらすツールとして、闘病記を用いた患者支援活動の有用性を明らかにすることを目的とし、今年度は「闘病記を読む会」に関する実施可能性の検討を行った。大規模A病院の看護師約30名に対する院内研修会後、研究協力の得られた4名の看護師と闘病記朗読会を開催し、質的にデータを収集した。現在詳細を分析中であるが、看護師たちは闘病記を通して日々の看護活動を振り返り、患者当事者の思いを知ることからよりよい看護方法を模索しようとしていた。また、患者支援の方策として患者とともに闘病記を読むことについては、患者自身が他の患者の思いを知ることを通して、医療者と話し合う題材を共通に持ちながら、自らの病い体験について相談する契機となることが予測され、会開催について好意的な反応であった。次年度も引き続き看護師との朗読会を開催する予定である。 また、市民への広報活動として、6名の講師を迎え闘病記研究会フォーラムを開催した(2009年10月24日大阪府社会福祉会館)。メインテーマは、医学・看護学教育への闘病記の活用についてであったが、専門職および市民を含め約50人の参加が得られ、患者当事者性を学ぶ上での闘病記の可能性が示唆された。 なお、闘病記朗読会については、地域における活動意義が徐々に周知され始め、以下3件のメディア掲載を得た。2009年4月16日産経新聞朝刊18面「闘病記1000冊『心の薬局』」、5月1日毎日新聞朝刊12面「患者の気持ち知りたい関心高まる闘病記(上)」、6月20日読売新聞朝刊17面「『闘病記』図書館で脚光精神的支え、情報源に」
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