昨年度に訪問したバードウェーンハウゼン心臓病センター(ドイツ)での面接調査を手掛かりに、海外での心臓移植後、日本へ帰国した後の患者・家族への面接調査を行った。面接内容は、心臓移植を受けたあとの気持ち、海外での待機中の思い等とし、それぞれのテーマに沿って類似した内容ごとに分類し、解釈・分析を行った。分析の結果、患者・家族は、【心臓をいただいたドナー・家族への感謝】【渡航先で支援してくれた人々への感謝】【日本で支援してくれた人々への感謝】などの感情を抱いていた。また"日本で脳死臓器提供が増えるように訴えなければいけない"という【社会に対する働きかけの必要性】や、"元気になってお世話になった人へ恩返ししないといけない"という【臓器提供を受けた責任の重さ】などを感じていた。また、参加者は、2009年7月に改正された臓器移植法により、国内での脳死臓器提供が増えることを切望していた。改正臓器移植法は2010年7月より施行されることになっており、医療現場においてもシステム整備に追われているところであり、今回の面接調査で得られた結果は、国内の情勢を鑑みてもタイムリーな結果と言えよう。 今後は、改正臓器移植法にまつわる医療現場の意識の変化等にも焦点を当てて研究を進めていくことが課題であると考える。
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