研究概要 |
リカバリー(recovery)とは、1980年代より論じられるようになった概念であり、症状がなくなることではなく、精神的困難を抱える人にとっての人生の回復、人間性の再獲得を主題とする概念であるが、それらを当事者やその周囲の人はどう捉えているか、あるいはどのようにしたらリカバリーが促進されるのかについてはいまだ議論の途上である。本研究は、精神的困難を抱えている人のリカバリーを促す要因を探り、看護師を含め、リカバリー過程にある人の援助に携わる者のどのような関わりが効果的であるかについて示唆を得ることを目的とする。 本研究の2年度目にあたる平成20年度は、当事者の考えるリカバリーとその促進に必要な要素を知るために、日本でリカバリー促進活動に取り組む活動家らから聞き取りを行った。また、平成19年度調査のリカバリーを促すために必要なこと、求められる実践についての米国調査で明らかになった、ウェルネスに着目し、ピアサポートを効果的に用いることが大きな要素であるという結果に基づき、ウェルネス(Wellness)に焦点を当てた活動プログラムおよびピアサポートを推進するプログラムに参加し、主催者および参加者から聞き取りを行った。 調査により、リカバリーを促すためには、ウェルネス(Wellness)に着目をすることが日本でも有効であることがわかった。さらに、ピアサポートを効果的に用いることでリカバリーが促進される可能性は大きいが、日本ではまだピアサポートの方法論などが十分に普及されていないという点が明らかになった。加えて、リカバリーを測定する尺度では、どのようにリカバリーが定義され、測定されているかを検討した結果、リカバリーのとらえ方は多様であり、測定の方法(測定者、評価方法)も多様であることがわかった。 0802705EA001 平成20年度は以下3点に関する研究を遂行した。第一に, 実験的アプローチの土台として, 有向マトロイドを部分的に列挙する手法を考案し, 列挙結果を公開した. 松本宜丈氏(東京大学大学院修士2年) ; 今井浩教授(東京大学)と進めたマトロイドの大規模な列挙を元に向き付け可能性を考え, 有向マトロイドの部分列挙を行った, 本研究では松本宜丈氏とDavid Bremner准教授(UNB), 今井浩教授を研究協力者に迎えて遂行した。第二に, 数理計画問題を解くピボットアルゴリズムの提案を目指す理論的または実験的アプローチとして, 一部の数理計画問題のピボットグラフが満たす非巡回性, Unique sink性, Holt-Klee条件およびシェリング条件の性質を探求した, David Avis教授(McGill大学)を共同研究者に迎え, 数理計画問題の1つである線形計画問題のピボットグラフが満たす既存の3条件とシェリング条件の包含関係を示した(2009年出版予定 : CRM-AMS Proceedings). また, シェリングについては, 多面体の拡張である複体上でも定義することができるが、多面体の場合と異なり必ずシェリングが存在するわけではない。そこで、重要となるシェリング判定を線形計画問題として定式化することで解決した(2008年出版済み : Discrete Mathematics)。本研究は八森正泰准教授(筑波大学)と共に遂行した。第IIIに, 平成18-19年度若手研究(B)「幾何学的実現を与える組合せ構造の性質の探求と解析」において提案した超平面配置・擬超平面配置における線形性・非線形性を判定する方法の拡張として, 宮田洋行氏(東京大学大学院修士2年)と今井浩教授(東京大学)と共に, 既存の手法と平成18-19年度若手研究(B)で提案した手法とは全く異なる数値解析的な判定法を開発した(2009年出版予定 : Pacific Journal of Optimization).
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