世界同時不況により、在日日系ブラジル人を取り巻く環境が劇的に変化した。調査地としていた石川県A市もその例外ではなく、日系ブラジル人数が激変し、日系人コミュニティにも変化が見られた。そのため20年度予算を21年度に予算を繰り越し、新たな対象地域を開拓し対象者を確保する必要に迫られた。 石川県では数社の大手企業が派遣業者を通じて日系ブラジル人を雇用しており、個人経営者のもとで働く者は少ない。このことは、1社の動向が地域に居住する日系ブラジル人の生活に大きな影響を与えることを示している。一方で他地域の企業で日系人を新たに雇用する動きもみられ、新たな対象者の発掘の可能性を見出すことが出来た。しかしながら、近年、各企業の部外者に対する対応は年々厳しくなってきていると言わざるを得ない。企業担当者の了承を得ることの困難さに加え、対象者自身の生活基盤が脆弱になってきている中での調査依頼は、多少なりとも煩わしさの伴う調査への承諾を得ることの難しさが伴った。 栄養調査とそれ以外の質的調査に関しては、個々人への調査のみならず、Community Based Participatory Research (CBPR)の概念を新たに加え、コミュニティの中の中心人物との接触を大切にし、地域の中のサブグループとしてどう有りたいかという集団としてのニーズを明らかにしアプローチを行っていくことが、日系人コミュニティの中に入っていくためには必要であるという着想に至った。今後は地域で鍵となる人物への接触を軸にさらなる対象者の発掘を行っていく。
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