本研究の目的は、うつ病性障害の患者(以下、うつ病患者とする)が感じる生活困難感を測定できる尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検証することである。うつ病患者を対象にインタビューを実施、「うつ病患者が生活を送る中で抱える困難感」および「困難感を規定している要因」の検討を行った。結果、メランコリー親和型うつ病の本質とも思われる、「自分が作り上げた理想にたどりつけない自分に、劣等感や怒りや恐れなど強い感情的な反応を持って責任をとろうとする(固)」と「自分と自分の枠を受け入れてもらうことを無意識のうちに相手に押し付け、それを否定されることにおびえる(恐)」、また生活困難感とも呼べる「しんどい状況に勝手に放り込まれたような苦しさをいつも感じ、自分の思うような人生を全うできない(足かせ)」と「自分の思考や自分が思う"うつ病"に飲み込まれ、しんどさがずっと自分にへばりつく(しんどい)」が明らかになった。近年、様々な臨床像を呈す「うつ病」患者が増え、「うつ病」の疾患概念の検討が課題となっている。そこで本研究は、さらに対象を増やし、より精度および妥当性の高い、社会に有用な「うつ病患者が生活を送る中で抱える困難感」および「困難感を規定している要因」の検討を進めることとした。
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