研究概要 |
本研究は,「調査1」地域住民(長崎市,五島市)および看護職(長崎市,県内離島)の遺伝カウンセリング理解の実態,「調査2」遺伝カウンセリング受診の質的調査,「調査結果の分析」調査1,2の結果分析,「分析からの検討」遺伝カウンセリング体制についての検討,の4部構成である. 21年度は地域住民に対する「調査1」(長崎市民195人(回収率39%),五島市民137人(27.4%)合計332人(回収率33.2%))について分析を行った.「遺伝」について知りたいと思いますかは,'かなりそう思う''まあそう思う'(以下,肯定群)は50.9%,社会の中に「遺伝」の相談窓口が必要と思いますかは肯定群57.9%,「遺伝」についての相談窓口があれば利用すると思いますかは肯定群34.7%,あなた自身の「遺伝情報」について知りたいと思いますかは肯定群52%であった.以上の項目について,長崎市民と五島市民に有意差は認められなかった.遺伝相談窓口がどこにあるか知っていますかは,'知っている'と答えた人は8人であった.以上,遺伝相談の必要性は半数以上の人は感じていたが,受診場所は知られておらず,自分自身が利用するという意識も低い結果であった.また,地域住民の遺伝に関する知識の認識の程度も低く,遺伝に対するイメージは暗い,怖い,わからない等の否定的なものも多かった.これは,社会の中に今なお残る「遺伝」の偏見や差別,更に遺伝教育の機会の減少も原因の一つと考えられた.地域住民が遺伝カウンセリングを受診しやすい体制として,これらの問題を解消することが必須と考える.また,遺伝医療を受ける機会が増えつつある現在,地域住民が遺伝学レベルで体質(病気)を理解することは,その問題を適切に捉えることになり,最善と思う医療の選択につながると考え,今年度は地域住民がより簡単に遺伝の基礎を理解できるためのツールの検討を行った.
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