研究概要 |
「介護予防の対象」として位置づけられている閉じこもり高齢者に,新たに「災害弱者」としての視点を加え,閉じこもり高齢者と地域とのつながりの実態を明らかにし,災害対策を見据えた社会的支援の在り方について検討することを目的に,平成19年度は下記の検討を行った。 1.第一調査(地域高齢者が生活空間の狭隘化に至る背景要因の検討)の実施 愛知県郊外に在住している虚弱高齢者61名を対象に,聞き取り調査と身体測定の計測を行い,生活空間の狭隘化と身体・心理・社会的要因との関連を検討した。その結果,対象者の一週間における外出頻度は平均5.5±1.9日であり,調査対象である虚弱高齢者は虚弱であるにもかかわらず極めて外出頻度が高く,先行研究で定義される「閉じこもり」には殆ど該当していないことがわかった。また,外出頻度と交流頻度は有意な相関関係が認められ,生活空間の狭隘化は外出頻度と交流頻度の減少が互いに影響しながら生じていることが推測された。さらに,生活空間の狭隘化の要因について重回帰分析を行った結果,外出頻度の規定要因として「性別」,「近隣ネットワーク」,「近所への外出」,「転倒経験」,交流頻度の規定要因として「聴力(低音)」,「老研式活動能力指標」が認められた。特に,高齢者の聴力低下は,仮説通り交流頻度の低下に関与していることが明らかとなり,閉じこもりがちな高齢者の社会的支援を検討していく際には,コミュニケーションの基盤となる感覚機能の評価にも目を向けていく重要性が示唆された。 2.第二調査(閉じこもり高齢者の災害意識と社会的支援の実態)にむけた準備 第一調査の結果をもとに,第二調査の実施に向けた調査票の作成および研究協力機関,研究協力者の確保にむけた準備を進めている段階である。
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