平成20年度より特定健診・保健指導がはじまり、産業保健と地域保健との連携が課題となっている。そこで、保健師は健康保持増進活動において中心的な役割を担っていく必要がある。しかし、特定保健指導対象者の大部分を担っている産業保健の分野では、その教育に関する教育プログラムが明確になっていない。そこで、本研究では産業における保健師の役割を明確化し、保健師養成機関における産業保健師教育を充実させることにより、地域保健と連携ができる保健師を育成するためのシステムを構築することである。 平成20年度では、8月から11月にかけて、職域で働く保健師16名を対象に、産業保健分野で必要な保健師の能力、特定保健指導に必要な保健師の能力、地域保健、医療分野との連携について半構造化面接を実施した。得られたデータはカテゴリー化によって、産業保健師に必要な能力を抽出した。また、カテゴリー化されたデータからアンケートを作成し、保健師を養成機関に郵送している。 平成20年度に厚生労働省から、「保健師教育の技術項目と卒業時の到達度(案)」が出され、課題の抽出、企画、計画、施策化、調整能力などがあげられていた。本調査においても同様の項目があがったが、組織学や対象企業の経営方針など産業特有の項目が抽出された。 今後の課題として、本調査であげられた産業保健師に必要な能力について、保健師養成機関がどのような教育として実施しているかを明らかにしていく。さらに、対象者である職域が保健師にどのような役割を求めているかを明確にし、保健師と対象となる集団との双方を踏まえた産業保健師教育のシステムを構築していく必要があると考えている。
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