平成20年度に成立した「高齢者医療確保法」により開始された「特定健診・特定保健指導」ではメタボリックシンドロームの概念が用いられ、その対象集団は、生産年齢人口である就労者である。そして、最前線で活動するのが「産業保健師」なのである。今後、メタボリックシンドローム対策及びメンタルヘルス対策が国の施策として、とりあげられている現状では、産業保健の分野は重要である。さらに、平成19年度に厚生労働省から出された、地域・職域連携推進事業ガイドラインでは、退職後の保健指導が継続できないといった問題が指摘され、継続的かつ包括的な保健事業を展開していくために地域保健と職域保健が連携し、健康情報・保健事業の共有を図ることを示唆し、行政(地域)保健師と産業保健師との互いの理解と連携が必要となっている。しかし、現在の日本の看護教育では、人が生涯で一番長く関わる産業保健における教育が画一化され実施されていない現状がある。そこで、職域、行政(地域)で活動する保健師が双方を理解するためには、行政の保健師教育に加え、産業保健師教育を充実させることが必須であると考え、本研究では産業における保健師の役割を明確化し、保健師養成機関における産業保健師教育を充実させることにより、地域保健と連携ができる保健師を育成するためのシステムを構築することを目的としている。平成21年度は、平成20年度で得られた産業保健師に必要な能力に関するインタビュー調査の内容をさらに深め、国際地域看護学会にて発表した。今後の課題として、産業保健師に必要な能力について、保健師養成機関がどのような教育を実施しているかを明らかにしていくとともに、産業および地域で活動する保健師に対するグループインタビューを実施していき、最終年度で産業保健師教育のシステムを構築していく。
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