研究概要 |
中核都市A市で毎週行われている炊き出しの場所で,健康支援活動を実施した(月2回,計15回)。机と椅子を設置し,血圧計、血圧手帳・ボールペン、体温計、爪きり、綿棒・耳かき、体重計、体脂肪率計を準備し、自由に使用できるようにした。また炊き出しに集まる人々に,活動の紹介を掲載したビラを毎回配布、数回に1度はマイクで情報提供した。その際、血圧への関心は高いと考え、特に血圧測定についてアピールした。 毎回15〜30人程度(多くは男性,時おり女性もいた)の人々が,それぞれの関心にそって自由に測定などしていた。特に継続的に血圧測定をする方が多く,回を重ねるごとに徐々に顔みしりになり,前回の測定結果を思い出しながら健康の状態を一緒に確認することが増えた。希望した人に対しては測定値を書き込んだ血圧手帳を渡していたが,少数の人が手帳を持参し,毎回測定値の変化に目を向けていた。また,血圧測定などを通して自己の健康について話されることもあり,健康だけでなく生活や生き方,将来のことについても一緒に考えることもあった。 身近に自己の健康状態を知る機会があることは,自分自身の健康に関心を持っていない人にとっては関心をもつ機会となり,関心を持っている人にとっては,自己の健康状態を知り健康行動を振り返る機会になった。また定期的で継続的な活動を通して,徐々にホームレスの人々と研究者との関係性が構築でき,健康や生活上のことについて語り合える関係性に発展した。さらに回を重ねるごとに当事者同士が測定をすすめあうことが増え,友人やそこで出会った人々と測定値について語り合う場面も増えていった。この関係性の中で,ホームレスの人々同士が互いの健康に関心をもちあい,それぞれが自分自身の健康について語り合うことを通して、相乗的に健康への関心を高める結果につながったと考えられる。
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