研究概要 |
H21年度はH19~20年度の研究結果を受け,女性高齢者に対する尿失禁の改善を主目的とし筋力維持,バランス機能向上を目指した運動教室(以下,運動教室)を立案,実施しその評価を行った。対象は研究に同意を得られ,運動教室に継続して参加された地域在住の健康な女性高齢者17名のうち16名。運動教室に参加のない地域在住の健康な女性高齢者23名であった。調査内容:尿失禁における自覚的症状QOL(以下ICIQ-SF),握力,開眼片足立ち,ファンクショナルリーチ(以下FR),30秒椅子立ち上がりテスト,長座位体前屈を運動教室実施前後に測定した。倫理的配慮:所属施設倫理審査委員会の承認を受けて行った。運動教室内容は(1)健康チェック,(2)骨盤底筋体操と骨盤底筋補強運動,介護予防体操,(3)ストレッチポール(LPN社,以下SP)を用いた体幹の姿勢改善等に効果的な運動,(4)尿失禁等に関する講義を組み合わせ週1回90分,全12回実施した。内容は理学療法士の指導を受けて構成した。【結果】教室の実施前後の比較をしたところ,教室前尿失禁自覚は16名中15名(94%)であったが実施後13名(87%)が自覚症状消失または症状が改善し,ICIQ-SF得点も有意に低下した。また,動的バランス機能をみるFRの値は有意に上昇した。しかし,全身筋肉量と相関している握力,静的バランス機能をみる開眼片足立ち,下肢筋力を示す30秒椅子立ち上がりテスト,柔軟性をみる長座位体前屈は,ほとんど変化がみられなかった。バランス機能の向上を目指して取り入れたSPは,対象者から反応もよく,高齢者への動的バランス機能向上のための運動方法の一つとして有効性が示唆された。教室終了後も参加者から運動を継続したいとの申し出があり,教室を継続する取り組みへと発展している。これは継続の重要性を繰り返し伝達していた効果とみられる。今後の課題として,尿失禁改善に影響を及ぼす因子について等,考察をすすめ,教室内容の評価を多方面から行う必要がある。
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