これまでの2年間に続き、通所介護施設を利用するアルツハイマー病高齢者を対象として「寄り道散歩」プログラムを実施し、その効果を評価した。「寄り道散歩」プログラムとは、アルツハイマー病高齢者5-7名、ボランティア数名、施設職員1名が、施設から400-500m離れた公園や公民館まで歩いて行き、お茶を飲むなどの休憩をとってから歩いて戻ってくるというプログラムである。今年度参加した6名を含め、3年間でプログラムに3ヶ月間参加することのできた合計18名を対象として分析したところ、特に自宅における周辺症状の出現頻度(Behave-AD)が低下することが明らかになった。同時に施設における周辺症状の出現頻度も低下する傾向にあった。さらに家族からのコメントから、夜間の睡眠状態が改善される可能性があることが示唆された。通所介護施設は、介護保険サービスの中でもっとも多く利用されているサービスの一つであり、施設入所を遅らせる可能性があるとして注目されている。今後認知症高齢者の数は増加の一途をたどるため、認知症高齢者の入所を遅らせるような有効なプログラム開発が求められる。通所介護施設を利用している間に家族が休めるだけでなく、自宅での周辺症状の出現頻度を低下させることができれば、施設入所を遅らせることができるかもしれない。「寄り道散歩」は、実行機能障害のあるアルツハイマー病高齢者であっても混乱なく実践することができ、地域とのかかわりを作ることから俳徊時のセーフティネットとして役立つ可能性がある。今後はアクチグラフを利用してこのプログラムの効果を検証する予定である。
|