背景と目的:生活習慣病の予防を意図した身体活動に関する健康づくり指針は、一日30分以上の中強度の身体活動をできれば毎日実施する事を推奨している。またできれば毎日、一回10分以上の身体活動を一日通し計30分以上中強度で行う事も推奨している。しかし、健康に対する一回10分未満の短時間の身体活動の実質効果を調べた研究は不足している。本研究では、生活習慣病者を対象に心臓血管病の危険因子である食後の中性脂肪について、中強度で3分10回と30分1回の自転車漕ぎ運動が食後の中性脂肪値に及ぼす影響を比較した。対象・方法:8名の男性肥満者(27±2歳)は連続した2日間の工程を1週間の間隔を空け3試行に参加した。実験一日目、安静試行では参加者は運動を行わず安静を保ち、運動試行では最大心拍数の60%の強度で自動車漕ぎを3分、1日を通し10回(30分の休憩をはさみながら)、または30分1回の自転車漕ぎ運動を行った。各試行とも実験2日目、参加者は10時間の空腹の後、中脂肪食を朝食に取り、その後安静を6時間保った。血液を実験2日目の空腹時、食後2時間後、4時間後、6時間後に採取した。結果:実験2日目の食後の中性脂肪値は安静試行と比較し、分散運動試行、一過性運動試行でそれぞれ有意に低値を示した。両運動試行の間には有意な差は認められなかった。結論:男性の肥満者において、一日を通し一回あたり短時間の累積した30分の分散運動は30分の一過性運動と同程度、食後の中性脂肪値を低減することを明らかにした。従って、長時間運動が行うことができない人においても、一回あたり短時間の累積した運動は生活習慣病予防の観点で有効である。
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