本研究の目的は、ヒト生体における骨格筋無負荷最大短縮速度の測定法を確立し、その加齢変化について検討することである。本研究は「ヒト生体における骨格筋無負荷最大短縮速度の測定法の確立(実験1)」および「ヒト骨格筋無負荷最大短縮速度の加齢変化の検証(実験2)」という二つの実験から構成され、このうち平成19年度は実験1を実施した。得られた知見は以下の通りである。 1)前脛骨筋に電気刺激を与えてから足関節トルクが発揮されるまでの時間(EMD)を測定したところ、関節角度にあまり依存しないことがわかった。この結果は先行研究と異なるものであるが、先行研究では総腓骨神経を刺激していたため、同神経に支配される他の筋が関与していた可能性がある。 2)腓腹筋内側頭に電気刺激を与えEMDを測定したところ、足関節角度0度〜底屈25度の範囲ではEMDはほぼ一定値であったが、さらなる底屈位ではEMDが徐々に延長(数ミリ秒)していくことがわかった。方、刺激から筋腹表面に貼り付けた加速度計が振動するまでの時聞については、ほぼ一定値であった。 3)ヒラメ筋下部に電気刺激を与えEMDを測定したところ、足関節角度0度〜底屈30度の範囲ではEMDはほぼ一定値であったが、さらなる底屈位ではEMDがやや延長した。一方、刺激から筋腹表面に貼り付けた加速度計が振動するまでの時間については、やや短縮する傾向が認められた。 4)以上の結果および知見から、腓腹筋内側頭およびヒラメ筋では、EMDと筋長の関係から骨格筋の無負荷最大短縮速度を算出可能であることがわかった。
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