ドーパミン神経細胞は脳の諸機能の調節を行い、またパーキンソン病などの神経精神疾患にも深く関係するが、細胞レベルでの作動機構はまだ良く分かっていない。この点についてさらに研究を進めるため、まず、ドーパミン神経細胞を生きたまま細胞を観察する系(ライブ・イメージングの系)の確立を目指した。そのために、ドーパミン神経細胞のマーカーである、チロシン水酸化酵素(TH)遺伝子のプロモーターによりGFPを発現するトランスジェニックマウス(TH-GFPマウス)を用いた。ドーパミン神経細胞を多く含む中脳腹側部より初代培養を行い、GFPの発現を確認した。4週間以上培養が可能となり、発達したドーパミン神経細胞の軸索および樹状突起についても観察可能となった。この培養系を用いて、ドーパミンシナプスの活動のイメージング解析系の立ち上げを行った。GFPを発現している培養ドーパミン神経細胞について、細胞外電気刺激により脱分極が信頼性高く引き起こされることをカルシウムイメージングにより確認した。さらに、シナプス小胞の動態を調べるため、シナプス小胞の染色が可能であるFM4-64色素を用いた。細胞外電気刺激を用い、エンドサイトーシスによるFM4-64によるシナプス小胞の染色、および、エキソサイトーシスによる脱染色が確認された。また、イメージングをした細胞や軸索を特定し、THの発現を免疫染色により調べ、ドーパミン神経細胞であることを確認する実験系も確立された。今後、この系を用いて、ドーパミンシナプスの作動機構についてさらに解析を進める予定である。
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