研究概要 |
本年度はtime-lapse画像による生体バイタルサインデータ計測の精度検証を目的に撮像デバイスの選定ならびに生体基礎データの収集を行った.すなわち,研究代表者が確立した従来の計測法(Takano C他.Medical Engineering and Physics誌)では,撮像デバイスに市販ビデオカメラを利用しており,画像データのサンプリング間隔は30frame/secである.また,ビデオカメラは通常はオートアイリス機能を搭載するため,画素濃度値の計測に際しては,計測工学的に不確定な要素が残っていた.心拍,瞬目,身体動揺などの比較的低周波数の生理データ計測に際してはこの仕様でも十分と考えられたが,やや高速度の生理量である脈波速度の計測には不十分と考えられたため,まずは,より高速度撮影が可能なデバイスを利用することで計測精度の検証実験を実施した.すなわち,撮像デバイスとして,株)デジモ製の高速度ビデオカメラ(ラインレコーダ)を用い,100-500frame/sec程度の撮影速度,オートアイリス機能無し,にて被験者の顔(頬)を撮影した.その結果,従来法よりも高精度に心拍信号(瞬時心拍数)ならびに呼吸信号を検出可能であることを確認した.その上で脈波計測を目的として,複数の被験者を対象に前腕上の脈拍動点を撮影した結果,十分な精度で血流に伴う皮膚振動を画像計測可能であることが分かり,体表上2箇所の拍動点を同時撮影することでtime-lapse画像による脈波計測が可能である事を示した.拍動の弱い被験者に対しては,加圧,固定などの多少の制約を設ける必要があることも示唆された.撮影の際の照明に関しても検討したところ,商用交流を利用した光源,すなわち,蛍光灯,白熱電球,ハロゲンライトなどはすべて,100Hzの振動成分を含むことがわかり,本デバイスの撮影光源としては不適であることがわかった.適切な光源としては,太陽光ないしLED光源であった.以上の計測実験を通じた検討により,time-lapse画像によって様々な生理データの取得が十分可能であることが示され,以降,計測仕様をダウンスケールすることで,市販の安価な撮像素子を利用した計測デバイスの作成,実験住宅への導入が可能となると考えられた.さらに,複数の市販の撮像素子を利用した計測基礎実験を実施した.なお,瞬目,立位姿勢の計測に関してもtime-lapse画像による計測が可能であることを確認した.
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