研究概要 |
本年度の主な研究成果を述べる.昨年度の予備実験に基づき健常者を対象とした計測実験を行ったところ,被験者によっては拍動信号の計測が不安定となる状況が生じる場合があることが分ったため,計測原理に関する以下の実験を行った. (1)Time Lapse画像による非接触生体信号の計測メカニズムとして,拍動に伴う皮膚の微小振動を仮定した計測を行った.すなわち,前腕脈拍検知部を対象に,様々な方向より照明光を投影することで検知部を動面像撮影し輝度値信号の変化を計測した.その結果,照明光の投影方向を180度反転させることで,輝度値信号も正負逆転することが判明したことから,皮膚振動が計測メカニズムであることが示唆された. (2)上記とは別に,計測原理を皮膚表面の血流による信号変化をとらえたものと仮定し,以下の実験を行った.頬を中心に被験者の動画像をカラー撮影し,得られた動画像をRGB分解し,おのおのの画像の平均輝度値変化を解析した.その結果, Green画像がもっともノイズが少なく心拍信号を検出できることが示され,血流信号もこの計測メカニズムの要因のひとつと考えられた. 以上より,本計測はふたつの要因に基づくことが示され,今後のデバイス設計に際し参照すべきであることが分った.このほか,脈波計測として,高速度カメラによる計測と光電脈波計による比較実験も行った.すなわち,心電図R波形を起点とし,指尖での光電脈波波形ならびにビデオカメラによる輝度値変化データを取得することで脈波速度を求め,比較した.その結果,両者は良く一致し,画像による非接触定量計測の可能性を示した.なお,ハードウェアの小型化に関する検討に関しては,携帯電話メーカとの共同研究として実施することが開発期間を考えると得策と判断し,現在,共同研究契約の締結を進めている.
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