本研究では、異分野間のコミュニケーションを「デザイン」という手法によって考察し、特に分野間を行き来する情報をいかにして視覚化し、また時に触知できるような状態にしていくのか、といった問題に焦点を当て、情報共有のデザイン化モデルの構築を最終的な目標とする。平成19年度においてはメディアアーティストや映像デザイナーらとワークショップの開催を試験的に行う予定であったが、それに先がけ基礎データの収集を主に行った。具体的には情報の視覚化という観点で、映像、特に「アニメーション」の持つ情報伝達力に着目し研究を開始した。近年、美術・デザイン系の大学生が映像作品の制作に挑む際、「アニメーション」という形式をアウトプットするケースが非常に増えている。そのような背景に立ち、本研究では学生を中心としたアニメーション制作者を取材対象とし、アイデアが作品に落とし込まれる制作プロセスに着目しながら、造形行為にどのような伝えるための工夫が内包されているのかを読み解き、コミュニケーションのあり方や視覚を中心とした情報教育のためのヒントを検証することを試みた。アニメーションという時間軸表現を完成させる一連の過程を俯瞰的な視点でとらえ、それを「デザイン」行為と位置づけると制作者には「デザインするためのデザイン」作業が求められる。インタビュー取材を通して、それらの行為とは、単にイメージの視覚化を支援する「イメージ・プロセッサ」としての役割にとどまらず、制作者自身の思考を深めるためのツール、つまり「アイデア・プロセッサ」として機能していることが明らかになった。我が国のコンテンツ産業の核といえるアニメーション。しかし情報伝達手段という観点においてはその利用価値はまだまだ未開拓であるといえる。20年度においては、ワークショップの開催などを通して、情報伝達手段としてのアニメーションの可能性をさらに分析する予定である。
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