1年半におよぶ研究期間においては、研究課題にある情報共有の方法論として、アニメーションに着目し、その創造プロセスの解析を行った。具体的には、アニメーションを重要な表現手段としてとらえているデザイナーや美術作家ら8名に対して、ビデオ・エスノグラフィの手法に乗っ取りインタビュー取材を行った。アニメーションという時間軸表現を完成させる一連の過程を俯瞰的な視点でとらえ、それを「デザイン」行為と位置づけると、作者が物語や個人的感情、あるいは共時的な時代感覚といったメッセージを様々なカタチで伝達しようと試みる際、作者自身には「デザインするためのデザイン」行為がいくつか必要となる。アイデアが作品に落とし込まれる制作プロセスに着目しながら、「デザインするためのデザイン」行為を芸術のアルゴリズムととらえ、そこにどのような伝えるための工夫が内包されているのかを読み解き、コミュニケーションのあり方や視覚を中心とした情報教育のためのヒントを検証した。個から個への情報伝達、あるいは情報共有のためには、アニメーション的な、つまり視覚情報を連続的に提示する手法が極めて効果的であることを導き出すとともに、そのアニメーションの創造過程に身を置くことによって、映像化作業においては提示すべき情報を主観的にとらえ、また一方で映像化のための方法論構築においては極めて客観的に対象を把握していることが明らかになった。つまり、アニメーション創造過程が、イメージ・プロセッサー(画像生成)のみならず、アイデア・プロセッサー(思考を深めるためのツール)としての役割をも担っていることを明確にした。研究期間が終了した現在、視覚情報をふんだんに取り込んだ研究成果のハンドブック化を行い、教育などの現場においての応用を考察する基礎資料とする予定である。
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