平成19年度の研究によって成獣ラット脳内におけるアンドロゲン受容体(AR)、エストロゲン受容体(ER)αおよびβの脳内発現分布と、性ホルモンによる受容体タンパク量の変化が明らかになった。 対照群と比較して、脳内ARタンパクはアンドロゲンによって増加した。ERαタンパクは精巣摘出および副腎摘出したラットで対照群よりも増加するが、ERαの増加は扁桃体および分界条床核でより顕著であった。精巣および副腎を摘出したラットにエストロゲンを外因性に投与することで、扁桃体・分界条床核だけでなく内側視索前野・視床下部腹内側核のERαも減少することが明らかになった。ARおよびERαタンパクの増減が、mRNAの増減によるものか、タンパクの安定性の変化によるものかは現在のところ結論が得られていない。また、ERβタンパクは精巣摘出・副腎摘出・性ホルモン投与の影響を受けなかった。 AR・ERα・ERβタンパクの増減に対するコルチコステロン(CS)の影響を調べるため、Sham群および精巣および副腎を摘出したラットにCSの投与を行ったところ、Sham+CS群において対照群よりもARの減少傾向が観察された。しかしながら、上記のようにARはアンドロゲンの影響を受けるため、精巣から分泌されるアンドロゲン量の変化による影響が大きい。そのため、anti-AR免疫染色より得られる結果にも影響を及ぼし、精度の高い結果が得にくい。この問題を解決するため、血清アンドロゲン量をコントロールしたモデルを作製する必要がある。
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