申請者は、先行研究により意志決定・行動選択重要な役割を果たすと示唆されている大脳基底核の線条体を対象に、神経生理学的手法と行動薬理学的手法を併用することで、その役割を明らかにするための研究を行う。具体的には、線条体に含有されるアセチルコリンが大脳基底核・線条体の報酬に基づく行動の選択と実行に果たす役割を解明する。 研究初年度の本年は、正と負の強化信号に基づいて、多段階からなる行動選択を試行錯誤で実行する課題をニホンザルに訓練し、一頭のサルで訓練を完了した。また、従来より継続して研究を行いこの研究計画の基となった研究成果を、論文として発表した(Yamada et al. 2007)。大脳基底核の線条体が過去の経験から推定される報酬確率を表現することを示し、線条体が強化学習に果たす役割の理解を深めた。研究最終年の平成20年度は、もう一頭のサルの訓練を継続するとともに、行動課題を行っている最中のサルの線条体に薬物を注入することで線条体のアセチルコリン受容体の機能を一時的に脱落し、行動障害の症状を定量的に比較する。そして、『線条体のアセチルコリンは、試行錯誤中の行動の選択と実行を調節するか?』を検証し、大脳基底核・線条体の強化学習モデルにおける、アセチルコリンが果たす役割を検討する。最終的に、2頭のサルを対象に首尾一貫した結果が得られるかを確かめ、研究の成果をまとめる。現在、脳内に薬物を微量注入するための実験条件の検討を開始し、初期データを取得し始めたところである。
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