申請者は、先行研究により意志決定・行動選択重要な役割を果たすと示唆されている大脳基底核の線条体を対象に、神経生理学的手法と行動薬理学的手法を併用することで、その役割を明らかにするための研究を行った。線条体に含有されるアセチルコリンが大脳基底核・線条体の報酬に基づく行動の選択と実行に果たす役割を明らかにする。 研究最終年度の本年は、正と負の強化信号に基づいて、多段階からなる行動選択を試行錯誤で実行する課題をニホンザルに訓練し終え、線条体に微量の薬物を注入した。ニコチン性アセチルコリン受容体を阻害するために、拮抗薬のメカミラミンを用いた。その一方で、アセチルコリン受容体の阻害が引き起こす行動障害の特異性を知るために、GABAa受容体の作動薬であるムシモルを用いて線条体の投射細胞の活動を抑制し、その効果の違いを比較した。メカミラミンの場合もムシモルの場合も、ともに動物の試行錯誤中に不適切な行動の選択が増加した。特に、試行錯誤で報酬と結びついた選択肢を探している場合に、以前に選択した報酬の得られない選択肢を再び選ぶ行動が増加した。今回得られた結果は、7月に東京で行われた日本神経科学学会で報告した。今後更なる結果の検討を行い、論文としてまとめる予定である。
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