[研究目的]卵白中に存在するlipocalin-type prostaglandin D synthase(L-PGDS)が卵アレルギーの発症に関与する可能性について明らかにする。 [方法および結果]昨年、作製した鶏L-PGDSに対する抗体の反応特異性が低かったため、マウスへの免疫原として、鶏L-PGDSを遺伝子工学的手法により、大腸菌にて大量発現させ、抽出・精製し、組換え型鶏L-PGDS(rL-PGDS)を得た。rL-PGDSをマウスに免疫し、常法により4種の抗体産生ハイブリドーマを樹立した。これらmAbはSDS変性条件下のイムノブロットにおいて、卵白中の天然型L-PGDSと強くかつ特異的に反応した。ELISAによって求めたmAbと抗原rL-PGDSの親和定数は10^<-ll>〜10^<-12>Mであり、強い親和性を示した。本mAbのうちエピトープの異なる2種のmAbを用い、サンドイッチELISAによる鶏L-PGDSの微量定量法を確立した。また、鶏卵白からの天然型L-PGDSの精製も進めつつ、rL-PGDSを用いてアレルギーモデルマウスを作製し、天然型L-PGDSのアレルギー炎症への影響を観るための予備実験も行った。 [結果の重要性]これまで鶏L-PGDSに対するmAbはなく、今回、初めて作製した。本抗体は、卵白中の天然型L-PGDSと反応し、その反応特異性は極めて高かった。また、鶏L-PGDSの定量法も我々が初めて開発した。本定量法を用いて現在、卵白中L-PGDSの定量を行っている。これにより、既存のオボアルブミンを用いた食物アレルギーモデルマウスに鶏卵中に含まれるL-PGDS量を反映して投与することが可能となる。また、作成した抗体は卵白から天然型L-PGDSを精製する最終段階に用いることができる。したがって、本研究は目的達成まで間近となっている。
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